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04 Hiraeth

ウェールズ語で「ヒライス」と発音。

意味は「二度と訪れることができない場所への憧れの気持ち」

 

この言葉を知ったのは「なくなりそうな世界のことば」(吉岡 乾著 西 淑イラスト)に書かれていて素敵だなあと思ったのがきっかけ。

 

書籍にはこう書かれてある

帰る場所がある者は幸福だ。
誰のことばだっただろうか。
もう決して届かないものに対しての憧れは切なく、
だからこそ一層、すてがたいものになるのか。

[出典: なくなりそうな世界のことば (創元社)]

 

今はもうその場所はなくて、心の中にだけ存在している。現実にはないけれど、心を通してだけその場所の手触りを感じる

 

切ないけれど希望というか、心の拠り所が存在しているというのは大切なことだと思う。昔TINÖRKSで「Homing」(ホーミング)という曲を書いた。シンセのリフが永遠と続くミニマルでダウンテンポなトロニカ。原点回帰がテーマとしてあったと思うが、ヒライスのようなコンセプトも包含していたかもしれない。

 

人それぞれに帰る場所や大切な風景がある。もしかしたら現実に存在しないかもしれないけれど、その人にとっては心の拠り所となっているに違いない。

 

大阪生まれ大阪育ちの自分は自然が身近にない便利な環境でずっと暮らしてきた。子供の頃は田んぼで遊んだことはあるけれど自然に触れる機会はほとんどなかった。だから原生林など本当の意味での自然への憧れが強く、また自然の厳しさを知らない。時々旅行に行くが、行先はそのほとんどが自然の多い場所だ。そしてその自然の風景を見るたびに非日常を感じ、その風景が心の拠り所になっていく。

 

この世界はあらゆるものが動的に絶え間なく変化している。とするなら、そもそも厳密に同じ場所というのは存在しないのではないだろうか。その時間、人が人に出会ったり、たわいもない風景が、ある人にとっては忘れることができない大切な場所になったり、すべての場所は誰かにとっての「ヒライス」になるのではないだろうか。

 

[lyric]

Hiraeth in the past to be alone while

Someday valley you know
The remembrance orb, phosphor
In overlaid time

your breath with a calm inside

Starry way out you’ll find
A honest place you were
Awaken the lost time

before being a reverie

 

【日本語訳】


独りになるための過去のヒライス

いつか見た渓谷
記憶の形 光の粒
つらなった時の中 静かな吐息をまとう

星の降りそそぐ未来をみつめ
偽りのない場所へ

失われた時を目覚めさせる
それが空想になる前に

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

かなり意訳したけど。個人的には自分にとって本当に大切な場所や記憶は、共感はできるが、自分以外の誰かに理解できるものではないと思う。たとえそれが現実にはすでに存在していなかったとしても、それを大切に思う気持ちが未来への活力になったりするし、辛くなった時の心の拠り所にもなるのではないかな。

 

人は未来にしか進むことができない。だけど本当に大切なものは、たとえ形がなかったとしても持っていける。僕はずっと持っていたいと思う「仕事の思い出」というのはほぼゼロに等しいんだけど、音楽の思い出というのは本当にたくさんあって、ほとんど形がないけれど、宝物のように大切にしています。色々な場所で演奏して、音楽をやってなかったら会えないであろうたくさんの人にリアルとネットの世界で出会えたので、生きてて良かったなあとしみじみ思います。

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