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02 Skábma

 

スカーマと発音。スカンジナビア半島、フィンランドなどで話されているサーミ(Sami)語で「太陽の出ない季節」つまり極夜を意味するそうです。

[lyric]

夜の深さを広げた
旅人にともる明かりを
囲むように空は眠る
果ては消え

夜の翼にくるまれ続けて
満たされる時の実
けなげに生きていく

溶けた道を
星は流れ

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


デモを作ったのが2018年秋。もともと雫のソロプロジェクトのために書いた曲だったのですが、紆余曲折あり制作が止まっていました。雫もそうですが、僕もすごく思い入れのある曲なのでお蔵入りにはどうしてもできませんでした。

 

月日が経ち、今回の「森のはじまり」の収録曲を決める中で、ピアノを基調としていてかつ雰囲気がとても合うと思ったので制作を進め完成させました。

 

Skábma(スカーマ) 

太陽の出ない季節を意味しますが、実は6曲目「Kaamos」(カーモス)と同じ意味です。特に何か意図したわけではないです。フィンランド語かサーミ語かの違い。極夜というのは一日中真っ暗というわけではないそうで、正午の数時間の夕暮れの明るさだそうです。そうは言っても、日本人からするとほぼ暗闇に等しい感覚だろうと思います。

 

暗闇がずっとつづく季節、わずかばかりの灯を手にして、空の果て、闇の向こうを眺めていると、いつしか夜にくるまれていく

 

余計なものは消えていき、本当に大切なものだけを持って灯りのある方へ旅していく

 

そういう情景をテーマに描きました。

 

雫のウィスパーヴォーカルがどことなく穏やかな灯りのようで曲の世界観をうまく広げてくれています。この曲で弾いているピアノはNative Instrumentsのuna corda(ウナコルダ)。通常のピアノは中音と高音は1鍵盤に対して3本ずつ弦が張られ、低音は最低音に近づくにつれて3本、2本、1本と減らされますが、una cordaは個々の鍵盤に1本ずつ弦が張られています。


楽語でuna cordaは「弱音ペダルを使用して(1弦)」を指すそうです。音色はとても柔らかく、羽毛のようなイメージ。前作「星のピアノ」でも収録曲すべてでこのピアノを演奏するくらい気に入っている楽器で、曲ごとに音色をエディットしています。曲の一番最後に音量は小さいので気がつかないかもしれませんが、演奏終了と同時にダンパーペダルを離す時の音がかすかに聞こえると思います。

 

una corda(ウナコルダ)のように輪郭が丸い音色というのは、自分が音楽を制作する時の重要な要素のひとつです。尖った鋭い音や威圧的で煽動的な音は自分で作ったり演奏したりする気が起らないです。原因が何なのか分かりませんが。多分、動的に大きく感情が触れることに抵抗があるのかなと推測します。物事を見て、本質を見ないで威圧的、短絡的に言及したり、断定することに対して嫌悪感を抱くのに通じているような気がします。

codaには雫が演奏するアイリッシュフルートのソロが入っています。1曲目「森のはじまり」でも登場したTINÖRKSを象徴する楽器のひとつですが、この曲の録音はマイクがBlueのBlueberryとShureのダイナミックマイクの2本録りをしたものです。コンデンサマイクの繊細さ解像度の深さとダイナミックマイクの芯の太さ、それらのバランスをとりながらうまくレコーディングできたと思います。録音はモノラルですが、プラグインで広がりを出しています。

 

サビ的なセクションで全体を包み込むようなパッドの音色は奥行きや立体感を出すために非常に重要なパートです。穏やかにキラキラと多少迫りくるような感じに仕上げることができました。楽曲のBPMはゆったりしていて音数も少ないので、音の余韻やリズムの余白に時の移り変わりを感じながら聴くと雰囲気がより伝わるかもしれません。

01 MORINO HAJIMARI
03 Glänta

04 Hiraeth
05 Kaamos
06 Norrsken

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